読書:外資系金融の終わり 藤沢 数希

投稿者: | 2013-08-15

今年の夏はとにかく金が無いので、お盆だからといって遊びに行くこともなく、研究費で買ってもらった総額ウン万円以上の本たちを読み漁っている今日このごろです。

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

人気ブロガー藤沢数希氏の著書。昨今のリーマン・ショックなどの世界同時金融危機、そしてその中で移り変わっていく外資系金融機関の内情が書かれています。

世界同時金融危機とは具体的にどういう仕組みで起こったのか、またどのような影響があってどのような問題をもたらしたのかということを説明できる人は実のところ少ないと思いますが、この本を読めば理解出来ます。また、外資系金融機関とはどれだけ破廉恥な業界なのか、実例を包み隠さず書いていただいているようです。そしてこれを読んで「やっぱり外資系金融で働きたい」という学生が少なくないようです(笑)。 

以下は書評というか復習も兼ねて内容の要約。

■サブプライムローン問題が起こったメカニズム
まずアメリカの低所得者たちでも家が買えるように、住宅ローンである「サブプライムローン」を証券化し、金融工学のエンジニアたちが様々なリスクのあるサブプライムローンをこねくり回してMBSやCDOというデリバティブ(金融派生商品)に変え、これらを有名な格付け機関がトリプルAなどのお墨付けをしてアメリカや欧米の金融機関は世界中で売りまくった。

結構売れるので20年ほどバブルが続いていたが、あるときフランス最大手の銀行であるBNPパリバの子会社が、CDOの買い手が無くなったことによって潰れてしまい、これに端を発して世界中でCDO等のサブプライムローンにまつわるデリバティブが売れなくなって、バブルが崩壊した。リーマン・ブラザーズ等の大手金融機関までもが潰れたのだが、さすがに潰れたら世界中がヤバいことになるような金融機関(AIGとか)は政府が天文学的な金額で救済した。といった感じだ。

結構大事なのはリーマン・ブラザーズの倒産によって世界同時金融危機が起きたと言うよりは、BNPパリバの子会社が世界同時金融危機の口火を切ったということだと思う。

■ ギリシャショックの諸々
そもそもギリシャはユーロ加盟条件を満たせる見込みがなかった(国の居債務残高をGDP比で60%以内の抑え、財政赤字はGDP日で3%以内に抑える、もしくはそれが可能であることを示さなければいけない)にもかかわらず、ゴールドマン・サックスのテク(クロス・カレンシー・スワップ)によって”飛ばし“という粉飾を行った。これで見事にユーロ加盟を果たした。

そしてどういうわけか2009年に当時ギリシャのパパンドレウ首相がこの飛ばしをバラしてしまった。ここでギリシャはヤバい、スペインやイタリアもヤバいんじゃないかという信用不安が起こりこちらもバブルが崩壊した。またそれらの金融機関を救ううためにまた税金による救済措置が施されている。

ユーロ圏の中で2%のGDPのみを占めるギリシャだったが、各国がギリシャの国債や複雑な金融商品を抱えていたために連鎖破綻の危機に陥った。しかもギリシャは「もう借金は踏み倒したい」と言い出して、それがギリシャだけでなく、ギリシャと同じ通貨「ユーロ」を採用しているユーロ加盟各国にもヤバい影響をおよぼすので、ユーロ加盟国で経済の強いドイツが、何もしてないのにその尻拭いをさせられるハメになった。

■too big to fail (大きすぎて潰せない)によってモラル・ハザードの発生 
こうしてサブプライムローンやギリシャショックの影響によって政府が金で救済をしたのだが、実は日本もIMFといった期間を通じて我々の税金が利用されていた。そもそもこうなったのは、過去の間違った規制緩和により金融機関は何でも扱う「金融コングロマリット」が構築されてしまい、「too big to fail(大きすぎて潰せない)」状態になり、政府が救済せざるを得ない状態になった。それが「最終的には政府が助けてくれるだろう」という考えを産み、リスクを取りまくっても救済されるというモラル・ハザードを産んでしまった。これは本来資本主義の考えである、潰れるリスクもセットでリスクを取るという原則を著しく欠いているのだ。

というわけで著者はこういった金融コングロマリットを解体すべき、というかボルカー・ルールやバーゼルⅢといった法規制によって自然に解体されるのではないかと”期待”をしている。また著者自身もヘッジファンドを立ち上げる準備をしているそうだ。

このへんまで整理しておけば僕もドヤ顔で世界同時金融危機について語れそうです。

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